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2013年6月 7日 (金)

上を向いて歩こう (1)

「上を向いて歩こう」(英語タイトル:SUKIYAKI)
  作詞:永六輔、作曲:中村八大、歌:坂本九
この歌が1963年6月に米音楽雑誌「ビルボード」のヒットチャートで1位を獲得してから、
今年でちょうど50年とのことである。
これを記念して、東京の世田谷文学館では「上を向いて歩こう展」なるものも開かれている。
(2013年6月30日まで)

私がこの曲に惹かれたのには2つのきっかけがある。
一つは、以前このブログでも紹介した Beegie Adair さんがこの歌をピアノカバーしていて、
この曲が非常に魅力的な響きを持っていて、
デリケートな和声と、とても相性が良いということを知ったことである。




原曲の雰囲気とはかなり異なるが、とてもお洒落な響きに惹きつけられる。
ここで気づいたことは、この曲は、いろいろなコードパターンが適用できるという意味でも、
とても魅力的な曲だということだ。

もう一つ、心にひっかかっているものがあった。
それは この歌のオリジナル盤 の出だしの木琴の音である。
どことなく寂しく、素朴で、しかしどこか温かみがある。
その響きがいつの頃からかずっと心に残っていた。
作曲者の中村八大さんはピアノの名手で、
ご自身の ピアノ・ソロ曲集 でも この歌のピアノ独奏 を残している。

しかし、坂本九さんが歌うこの歌のオリジナルでは、
ピアノの音は一切出てこない。
ストリングスとベース(コントラバス)、金管、ドラムス(ブラシ音)、
そして前奏と間奏部分に出てくる木琴、により構成される伴奏音は、
もの哀しさを漂わせながらも、歌詞の意味とは裏腹に、
どこか心が浮き立つ、前向きになれる、そんな心地よい雰囲気を醸し出しているように思える。
ピアノの音の素晴らしさを生かすとともに、
原曲の良さを極力素直に編曲に取り入れたい私としては、
Beegie Adairさんとは別の行き方で、
とりわけこの出だし雰囲気を取り入れつつ展開していく編曲を行えないか、
と考えるようになった。

ついでだが、Diana Kingさんが日本公演で この歌を歌った記録 がある。
音楽としても歌としても、とても素晴らしいものだと思うのだが、
私がはじめてこれを聴いたとき、
この歌手の、ソウルフルで、能弁で、草書的ともいえる歌声の間に現れた、
会場の人々による合唱の歌声に、不思議な感慨を覚えた。
素朴で、控えめで、いわば楷書的な合唱が、夢見るような魅力的伴奏に乗って響くと、
それが見事な草書の間に不意に挟まっていたせいなのか、
それともその合唱の響きに、明るく、喜びに近いニュアンスが含まれていたせいなのか、
実に感動的な気分になり、
楷書もいいもんだと、つくづく感じ入ってしまった。
上手く崩すことができないという技術的問題は棚に上げて、
私の編曲における、旋律線を崩さない、という暗黙の方針も
 (ほかにやりようがないことは本来方針とは言わないが)
まんざらではないのではないかという思いを強くした次第である。

この曲の構成は
  A-A-B-A-A(口笛)-B-A
となっている。
おぞましいことに、同じフレーズAが5回も出てくる。
この歌の編曲に半年近く費やした主たる理由がそこにあるが、
結論から言えば、この繰り返し出てくるフレーズAが、
現れるたびに、音楽的に、
  起-承-転-転’(口笛的)-結
とイメージされるように意識した。
これらは聴く人にどのような心象をもたらすだろうか。

この編曲におけるコードの使い方と楽譜化については、
追ってまとめておこうと思っている。


「上を向いて歩こう」(英語タイトル:SUKIYAKI)
  作詞:永六輔、作曲:中村八大、歌:坂本九
  ピアノ編曲:真
  MIDI音源:EASTWEST  Quantum Leap Pianos : Steinway
  絵:開田風童、坂田喜作、中島潔、木村千代、他


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コメント

真さん
久しぶりのアップですね。
楽しませていただきました。

「上を向いて歩こう」はNHK「夢で逢いましょう」の「今月の歌」だったのですが、私はその次の月からこの番組を見るようになりました。ですからこの曲はその時は“先月の歌”になってしまっていたのですが、たしかドラマ仕立ての特集があり初めて聴いた覚えがあります。
「夢で逢いましょう」は当時も私の一番お気に入りのテレビ番組でしたが、今ふり返ってみると、日本のテレビ史上最高の番組ではなかったかと思います。永六輔のスマートで粋な構成、中村八大の「今月の歌」やピアノ演奏の洗練された楽しさ、渥美清らの泥臭くなくセンスのいい、しかし抱腹絶倒の芸、ビデオが実用化されていない時代の生放送で、中嶋弘子さんが話している背後では常にドタンバタンという音がしているという手作り感、それらが一体となって(shiolaboさんの言葉を拝借すれば)日本的土俗性とは違った、近代的な知性に裏打ちされながら、一方で誰にも親しみやすい大衆性を持っていたと思うのです。
「上を向いて歩こう」は青春の哀歓を歌った歌ですが、その意味で“日本の青春”を象徴する歌でもありますね。

すみません。私の“昔話”が長くなってしまいました。
あの“合唱”、本当にいいですね。そしてあの動画に使われている写真が、私が震災直後の記事で「ひとりじゃないの」の動画に使った写真と同じだったのには驚きました。同じ思いがあったのでしょう。
真さんのピアノアレンジは“合唱”と同じように、やさしく、温かく、控えめで、それだけに心にジーンと浸み込んできました。
次も楽しみにしていますね。(といっても、真さんのペースでどうぞ)

ひこうき雲さん
コメントありがとうございます。
ひこうき雲さんが「夢で逢いましょう」を見ておられてお気に入りだったとは。
私はまだ幼くて記憶がありません。
ただ、Dailymotionでその一部を垣間見ると、
時代背景もあるため、今そのまますべてのシーンを楽しめるかは別としても、
六八コンビで毎月新曲を作っていて、それらが歴史に残るヒットをしていたこと自体もそうですが、
バラエティーといえども、出演者がいずれも力量があって、
今では望めないような、末恐ろしい個の力をまとめあげて番組を作っていた、
そんな感じがします。
また今も、ひょっとしたら歌がとびきりうまい人、演奏力、表現力のある音楽家などが実は巷にはいて、
テレビやマスコミには取り上げられない、取り上げ得えない、
そんな状況なのではないかと疑ったりします。

それにしてもこの曲だけでなく、作曲者の中村八大さんには、どこか私も惹かれるものを感じます。
クラシック、ジャズ、ポピュラー、そして日本伝統音楽などの、いろいろな垣根を取り去って、
音楽の魅力をピアノや作曲を通じて追求していたように思われるからでしょうか。

ともかく、アレンジを気に入っていただけて光栄です。 真

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