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2012年11月 9日 (金)

天地真理69 ひとりじゃないの (4)曲

「ひとりじゃないの」は森田公一さんの作曲である。
以降の天地真理さんのヒット曲の多くをこの方が手掛けることになる。
森田公一さんは、前の年の1971年に、
松尾ジーナという人にデビューシングル「気ままなジーナ」(1971年)という曲を提供し、
作曲家として初めてヒット(小ヒットと表現されている)させたとのことだ。
その後同じ歌手に「月影のメロディー」(1972年5月)という曲を提供していて、
いわゆる「アイドル歌謡」の最初期に関わった作曲家でもあったようである。

  上記の「気ままなジーナ」を聴くと、なるほど「アイドル歌謡」とはそういうものか、
  と思わせられ、1970年代のアイドルたちが歌ったいくつかの曲に、
  その類似性を感じることができる。
  だが私は「ひとりじゃないの」を「アイドル歌謡」の仲間に数えるのには抵抗がある。
  女性コーラスによる、清純さや幼さを思わせるフレーズが入っているため
  そのような方向を狙ったものでもあることを否定はできないが、
  歌詞の味わいや歌い方が、「アイドル歌謡」と呼ぶには異質に感じられるからだ。
  あえて言うなら天地真理さんの場合、この後の「虹をわたって」からの数曲が
  それにあたると言えなくもないが、
  他の正真正銘の「アイドル歌謡」に比べると、
  それらにしても、どちらかといえば「童謡」に近い趣を感じてしまう。

また同時期に、和田アキ子さんの「あの鐘を鳴らすのはあなた」(1972年3月25日発売)
を作っている。
これはご存知のように全く毛色の違う曲であって、
森田公一さんの、作曲家としての器の大きさのようなものを感じるのだが、
久世光彦さんの歌詞に曲をつけることや、
CBS・ソニーの「1位獲得アーティスト」の曲を手掛けるということは、
当時のこの方の立場からすれば大抜擢であったのではないか。


この歌は、歌詞が始めにあって、それに曲をつけた典型のような曲と思われる。
森田公一さんはピアノを弾くので、作曲は通常ピアノを弾きながら行っていたと考えられるが、
この歌は、
小椋桂さんが言っていた「語り歌」なのではないだろうか。
つまり歌詞を何度もつぶやいていくうちに自然と抑揚がついて、
曲ができていく、というものだ。
実際この曲は、出だしの3小節がハ長調で言えばCコード(トニックコード、ドミソ、原曲のコードは
A♭)一本から動かしようがなく、

  オリジナルカラオケを聴くと、この部分でベース音はA♭のままだが、
  微かに聴こえるリズムギターがA♭→A♭6→A♭M7→A♭6→A♭と動いている。

部分でも、コード進行の観点では、素人目に見てなかなかすっきりいかないメロディーラインになっているように感じる。
しかしこれに歌詞がつくと、そのような問題は感じられない、
歌詞に合った、心地の良いメロディーとなっていると感じられる。
これは私などから見るととても不思議で、驚異を感じてしまうのだが、
森田公一さんはその後の真理さんの歌で、
「若葉のささやき」や「思い出のセレナーデ」など、
コード進行
だけを取り出しても魅力的な曲も作っていて、
作曲家としての大変な柔軟性と実力を感じざるを得ない。

一方編曲に関しては、同じスタジオ録音の「ひとりじゃないの」でも、
アルバムの方に納められたものと、シングル版とで編曲者が異なる。
私にとっては、当時何度も聴いた、ベースギターからトランペットへと続く
シングル版(編曲:馬飼野俊一)のものが頭に焼き付いているのだが、

森田公一さんによるアルバム版の編曲には、
なるほどピアノ弾きだと思えるような、キラリ
光るものが感じられる。

このアルバム版とシングル版の違いはそれだけでなく、
天地真理さんの歌も別テイクであり、
その間に歌手としての劇的な変化が聴いてとれる、実に興味深いものになっている。
これに関しては、やはりひこうき雲さんの各曲解説のHP
大変秀逸な解説が既にあり、それと考えがまさに重複する部分もあるが、
私なりに次にまとめてみたいと思う。

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コメント

 改めて、説明するまでもないのですが、「ひとりじゃないの」は、LP版として72年6月1日に発売されており、その後、シングルカットと呼べるかどうかは分かりませんが、シングルは、6月21日にでています。つまり、LP版の方が、森田公一氏としてのオリジナルではないでしょうか。

 森田公一氏は、「当時のこの方の立場からすれば大抜擢」というのは、おそらくそのとおりであり、村井邦彦、浜口庫之助、平尾昌晃が楽曲を提供するなかで、あくまでも、LPのなかの1曲であり、森田公一氏は、仮採用のようなものだったのではないでしょうか。

 天地真理さんは、固定の作曲家が定まらないまま、おそらく歌手としてのイメージ、戦略も定まらないまま、デビューしてしまったというのは、新人歌手としては、非常に異例だったのでなはいでしょうか。小柳ルミ子は平尾昌晃、南沙織は筒美京平と、デビュー当初から、固定されていました。

 蛇足ですが、「ひとりじゃないの」のシングルジャケットは、セカンドアルバムのジャケットと類似していますが、なぜ、顔以外がボケているのでしょうか、不思議ですね、何を表現したかったのでしょうか。

 先ほど、ある方から、シングルは、5月21日発売というご指導をいただきましたので、私の先のコメントは、残念ながら、完全に的が外れておりました。大変、お騒がせいたしました。

 なお、ウィキペディア「天地真理」の中のシングルの表には、6月21日とあるのは、誤記ですね。

chitaさん
コメントありがとうございます。
この辺の順序は次の内容と重複するので省きますが、
シングルの発売日は「プレミアムボックス」内の記述では5月21日になっていますね。
本当の経緯は分かりませんが、
「ひとりじゃないの」関しては、いろいろと紆余曲折があり、
次第に作る側も歌う側も本気になって行っている感じがなんとなく伝わってきます。
物事がこのように進んでいく過程というのは、
後から振り返ってもとてもワクワクする思いがします。
それにしてもいろいろとよく観察されてますね。
私自身もピアノアレンジにつけるYTの画面の絵について、
ちょっとしたことでもいろいろと考えて決めますから、
ジャケット写真についても何か意味があることは十分考えられますが。

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