« 辻井伸行 ジェニーへのオマージュ 作品1 | トップページ | 天地真理62 ちいさな恋(2) »

2012年3月25日 (日)

天地真理61 ちいさな恋(1)

「ちいさな恋」(作詞:安井かずみ、作曲:浜口庫之助、編曲:馬飼野俊一)
天地真理さんのシングル第2弾目である。
この曲はファンの間では比較的地味な印象の曲なのではないだろうか。

しかし私には、これがとても天地真理さんらしい素晴らしい歌として強く心に残っている。



ドラムピアノ(いやビブラフォン系か)、弦のピチカートときて、フルートとピアノ、
そして弦がからむイントロは何度聴いてもわくわくする。
短調で始まる出だしのフレーズ、”たまに会えない日もあるけれど”が、
メゾソプラノというよりはアルトに近い音域で、とても心地よく響く。
このフレーズの最後の”けれどー”と延ばされる余韻の響き、ビブラートの心地よさ。
そして、”それでも私は”の響きで、ボーカル好きの人々の心を即座に掴んだはずである。
例によって、”天地真理トーン”とでもいうべき、倍音豊かにしてキンキンしない、
厚みがあって伸びが良い、不世出のファルセットである。
この他愛のない歌詞の歌が、芸術作品として見事に結晶しているかのようだ。

そもそも、”会えない日”は”たまに”である。
つまりほぼしょっちゅう会っているにもかかわらず、
なぜ”それでも”なのか、私には良くわからない。
しかしこの歌手がこのような素晴らしい響きで、とてもひたむきに、
短調の旋律の上下動に沿って”それでも私は待っている”と歌うと、
とても大切な気持ちがこもっているかのように思えてしまう。
しょっちゅう会っているのに、たまに会わないだけで”それでも”待ち遠しいということか。

ともあれ、続いて、短調から長調に切り替わると、
”ちょっとこわいの”という、とてもかわいらしい表現が聴かれる。
この部分、良く耳を澄ますと、とても慎重に、心をこめて、
言葉をメロディーに乗せて発していることがわかるだろう。
しかしそれは、とても控え目な表情付けだ。
控えめだからこそ、どことなく上品さが漂う。

そしてなぜここで”赤い夕陽が今沈”まなければならないのか、これもよくわからないのだが、
”沈むー”と発せられるこの声は、
この歌が、初々しさ、かわいらしさをアクセントとしているようでいて、
また印象的な言葉を散りばめているようでいて、
それらの脈絡が今一つつかみにくい、
つぎはぎ細工の体をなしているかのような中、
そのような小賢しい勘ぐりを見事に消し去り、
荘厳な、奥行きのある、何か立派な、深遠なことが起きたかのような、
不思議な聴後感をもたらす。
このような声の力による天地真理さんの歌の凄さは、語りつくせない。

これに類するこの歌手の声の力は、
YouTubeで紹介されている短いCMソング、
また「真理ちゃんシリーズ」での他愛のない挿入歌などを聴いてみても、
それらにことごとく見事な、芸術作品と言っていいほどの輝きと気品を与えていると、
私は断言していいと思う。

« 辻井伸行 ジェニーへのオマージュ 作品1 | トップページ | 天地真理62 ちいさな恋(2) »

天地真理」カテゴリの記事

コメント

真さん、こんばんは。再開おめでとうございます。

「ちいさな恋」の分析、いかにも真さんらしくて、ちょっとホッとしています^^。
そして、いつも感じる隙のなさに対しては、それが健在で嬉しく思う反面、もう少し真さんをゆる~いキャラに変身させちぇというわけのわからない願望が、またもや私の心の中に早速生まれてきておることを、ご報告させていただいておきます^^。すみません、いつも困った奴で^^。

それにしても、真さんと真理ちゃんとの対談、一度でいいから実現させてみたいですね。真さんの見事な分析に、「へ~すご~い!」と驚く真理ちゃん。でも、その直後、「私そんな風に歌ってたんだ~♪」の真理ちゃんのあっけらかんとした一言に、唖然としながらも嬉しそうに笑う真さん。そんな最高の場面を見たいと思っている私です・・・^^。ではでは 仁

真さん
首を長くしてお待ちしておりました。
そして再開第一弾のこの記事、やはり「ウン、ウン」とうなづきながら読ませていただきました。

真さんの言われる通り、この曲は、デビュー曲「水色の恋」と最大のヒット曲「ひとりじゃないの」にはさまれてちょっと地味な存在ですね。
しかし真理さんのうたの特質がとてもよく出ている曲でもあると思います。
例えば<言葉>と<うた>の関係。真さんの言われるように、この曲は断片的な言葉の連続で理屈で理解しようとしたら全く意味不明です。歌詞の中でも「なぜか(揺れてる)」と言っているようにもともと理由などないのですね。しかし真理さんに歌われれば、「何か立派な、深遠なことが起きたかのよう」に、これらの断片的な言葉が、思春期の不安と憧れを実感させる言葉に思えてくるのです。安井かずみさんは真理さんが理屈(ストーリー)で聴かせる歌手ではないことを直感的に見抜いていたのではないでしょうか。

仁さん
励ましのお言葉、ありがとうございます。
相変わらずが続くと思いますが、
よろしくお願いいたします。

ちょっと眠れなくて恐縮致します。大変申し訳御座いません。

再開良かったですね。わたくしもclassic馴染みあるもの聴いたら、やはり心癒やされ浄化作用おこり相乗効果が出ますね…


これからの季節
ビバルディの『四季』などや、軽快な爽やかな曲が春にはいいですね。


真様
ありがとう御座いました。
ちょっと検索して再開されているのでこのような時間帯にコメしたこと申し訳御座いませんでした。

これからも楽しまさせてくださいませ。
よろしくです。
ありがとう御座いました。


mariさんの真様の内容見なくていきなり投稿しております。
あとで見ますね。

お休みなさいですね…!

ひこうき雲さん

ありがとうございます。
ひこうき雲さんのHPは今まで何度も読んでおりますが、
ここでの記事を書く際には極力見ないようにし、
素直に原曲を聴きこんで、自らの心に現れ出る感慨を書こうと心がけております。
結果として感想が似通うこともあれば異なることもあるのですが、
今回ひこうき雲さんのコメントをいただいた後、
ひこうき雲さんのHPを見直してみると、
非常に類似するものがあってびっくりしております。
数人の意見が一致したからといって普遍的考えだというつもりはありませんが、
同じような捕らえ方をしておられる方がいらっしゃるということは、
やはりうれしいことであるという感慨に浸っております。

little☆Lilyさん

再開を早くもご発見いただき、ありがとうございます。
眠れない夜には、もう少し気の利いたピアノアレンジなどを含めておけば
より良かったですね。
ぼちぼちそういう方面もやっていきたいと思っています。
文章と違って何かと手間と時間がかかりますが。
どうか長い目でお見守りください。

真さま、エッセイの再開、おめでとうございます。

「ちいさな恋」を拝読し改めて鑑賞しますと心境の変化がありました。
何気なかったドラムの音はこの女の子にとっての
そこはかとなく心強い存在として響くようになりました。
そのリズムから、彼女のドキドキと自然な安らぎの
両方が温かく伝わって来ます。
また「水色の恋」とは異なる軽音楽的な印象も少し変わり
演奏の中で風のように舞っているクラシックの神さまを
見つけることが出来ました。
最後のリフレーンでは、お芝居の幕が下りてしまうような
惜しさがあふれてきます。
歌謡曲と呼ぶには余りにも豊かですね。
「ちいさな恋」には、ご関係の多くの方の
「真理ちゃんは私の最愛の娘です!」
という声が詰まっているみたいです。
ドラマ『刑事くん』で「ちいさな恋」がタイトル・挿入歌になり
天地真理さんが彼の松田優作さんよりも先に
殉職警官役を演じられたことも、やはり放送史に
残してほしいと思い返されます。
「水色の恋」より曲調が変わったとき
一ファンとして音楽的に成長しなければいけなかったのですが、
真理さんの優しい、お歌の届け方や「ちいさな恋」の
可愛らしい世界に、ただただ満たされていた私でした。
今回も多くのことを学ばせていただきまして
ご多忙のなかのご執筆、ほんとうにありがとうございました。
浅はかなコメントでたいへんお邪魔いたしました。
どうぞお身体をお大切になさってください。              

lunoさん

コメントありがとうございます。
言葉の端々から、豊かな感受性でこの曲を楽しんでおられることが伝わってきます。
真理さんが婦警役で「刑事くん」に出ておられたんですね。
私は見た記憶がないのですが、
1972年のある一話だけでの出演らしいですね。
「ちいさな恋」のプロモーションの一環だったのでしょうが、
それこそ多くの関係者が真理さんを盛り上げようとしていたことが想像されます。
後年には天然キャラクターとしてお茶の間に知れた時期もありますが、
私は案外、婦警役とか先生役も似合うような気がしています。
lunoさんのおことばから改めて気付かされるのですが、
確かにこの歌からは、
「優しさ」にくるまれた「かわいらしさ」が滲み出ていると感じられ、
それは真理さん特有の、何人にも換えがたい雰囲気のように思います。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/569269/53192123

この記事へのトラックバック一覧です: 天地真理61 ちいさな恋(1):

« 辻井伸行 ジェニーへのオマージュ 作品1 | トップページ | 天地真理62 ちいさな恋(2) »

2016年1月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

最近のトラックバック

ウェブページ

無料ブログはココログ