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2011年5月 2日 (月)

天地真理31 証③ 「天使の約束」-2 人間美1

天地真理さんの「人間美」を語るに際し、触れておきたいことがある。

ひこうき雲さんという方が、公式音源のすべての歌に寸評を書いておられることは、
ご存知の方々も多いと思う。
そこには、各曲寸評だけでなく、
彼女のうた》の魅力の本質や
青春の日々のエピソード、彼女のうたの評価のされ方など
彼女の生き様にまで迫る思いがある。

私が抱く思いのすべてが、
私のBlogよりはるかに簡潔で、格調高い筆致で
綴られている。
私など、
ひこうき雲さんの大きなたなごころの上であくせくともがいている、
孫悟空のような感を禁じえないのだが、
大いなる尊敬と共感を持って読んだそれらの中で、

「恋と海とTシャツと」という曲が彼女のベストワンだ、との記述を初めて読んだとき、
私は少なからず衝撃を受けたことを思い出す。

音楽への広範な理解と、うたへの深い考察を示されているこの方が
幾多ある彼女の名曲・名唱の中で、
こともあろうにこのような他愛のない青春ソングをベストワンとおっしゃることが、
少々滑稽で、不釣り合いな感じを抱いたのだ。
とりわけこの曲のような青春ソング的な歌詞に対して、
言葉一つ一つのニュアンス付けに非常に敏感に反応され、
その魅力を語っておられることが、その時は意外だった。

私は、今までの記事でお分かりだと思うが、
詩とか言葉よりはむしろ、音によって描きだされる印象に弱い。
歌詞は、その歌の状況を示す、一要素に過ぎないという位置づけに近い。
そのため、音としていろいろなニュアンスがあることは認めても、
それが言葉一つ一つに対応した、喜び、幸福感、陶酔感、といったものと
結びつけて考える所までは、その頃思い至っていなかった。
しかしその後、プレミアムボックスを何度も聴き、
初めは避けていた、彼女のヒット曲のいくつかをも再び聴き直すようになって、
私がなぜ若いころにそれほどまでにこの歌手に惹かれたのか、
それは彼女の外見だったのか、仕草だったのか、声だったのか、を自問し、
天地真理さんが歌にこめていた何かに思い及ぶようになると、
おぼろげながら、
ひこうき雲さんが言わんとしておられたことに通じる何かが
意識できるようになってきた。

もちろん、この方の言わんとすることが本当に理解できたという自信はないのだが、
私はこの方が
恋と海とTシャツと」の解説で述べられていること、
またそれ以前に、
誰をも幸せにしていまう魔法の力などについて書かれていることが、
何か、我々を捉えて離さない、天地真理という人の根源的な魅力・価値を、
端的に言い当てておられるような気がするのだ。

そして、私が「天使の約束」で気付き、「人間美」と名付けた
彼女の邪心のなさ、まっすぐさのようなものは、
子供たちに向かった語りかけだけでなく、
「恋と海とTシャツと」のような、ある意味他愛のない青春ソングの歌詞であっても、
それは同様に発揮されているのではないかと思うようになった。

そう思って、彼女のヒット曲、とりわけ、
「ひとりじゃないの」「虹をわたって」「ふたりの日曜日」から
「恋と海とTシャツと」までへと繋がる、
明るさを売りにした一連の曲を聴いてみると、
彼女が、音色美や構成美以上に大事にしていたものに気づかされる思いがする。

正直なところ私は長い間、これらの明るい「メルヘンタッチ」と称されるヒット曲が、
彼女を売り出すために寄ってたかって作り上げ、捻じ曲げ、彼女に強いた企画物として、
彼女の本当の姿を示すものではないと避けていた。
また、それらを歌っている頃の彼女が、テレビに引っ張りだこで、
過労などから声がうまく出ていないことがあったことが頭に焼きついており、
その印象から、これらの曲を聴くに堪えなかったこともある。
シングルレコードのA面よりはB面に、ヒット曲よりはアルバムの中の曲に、
彼女の本当の姿、本当の実力が発揮されていると思っていた。
もちろんそれらを素晴らしく思う気持ちは今も変わっていないが、
しかし今となってみると、
シングルレコードA面の荒唐無稽な、「メルヘンタッチ」の歌詞に、
スタジオ録音であっても、その後の2つのライブ録音であっても、
彼女がいかに心をこめて歌っていたか。
一見他愛のない歌詞に、芸術的といってもいい見事なニュアンスを付けていることが、
望まないものを強いられて、うわべの歌唱技術で表現したなどというものでは決してなく、

一見他愛のない歌詞の中に真実を見て、彼女が心から共感して、
自分を解放して実は歌っていたのではないか、と思えるようになった。
そしてこれらの歌は、どんな名歌手でもまねのできない不朽の名唱と思えるまでになった。

これらの歌が、日本レコード大賞や歌唱賞の対象とするには他愛なさすぎると、
世俗的に評価されてもなんらおかしくない
「メルヘンタッチ」の青春ソングであればある程、
そんな歌をこれほどまでに素晴らしく歌ったこの歌手の人間的価値の方に、
私は今意識が向いてしまう。
ついでながら、そういった世俗的に評価されそうもないものを、
臆面もなく「私にとってのベストワン」と言ってしまえる、ひこうき雲さんという方に、
私は畏敬の念を抱いてしまう。

しかも、これを歌った人は、今まで人前で歌ったこともなく、
学校の音楽の成績も良かったとは決して思われないような、
突如として歌手として作り上げられたその後の大方のアイドル歌手とはわけが違うのだ。
音楽的素養と実力を持った人が、
企画・選曲の当初に、本人の心の中に幾ばくかの葛藤があったとしても、
心からの共感なしに、このような世俗的には他愛がないとされるものに、
これだけの気品と慈愛に満ちた表現を吹き込めるものだろうか。

私が若いころ、本当の意味で彼女を意識し始めた「ひとりじゃないの」という曲においても、
そのシングル版を今聴くと、軽薄でただ明るいというのではない、
優しく、温かみのある、いつくしむような明るさに溢れていて、
音色美とか構成美とかでは言いつくせない、
もっと大きな、もっと本質的な魅力が見事に開花しているように思える。
そして、「天使の約束」で私が感じた思い、
この歌を歌っている人は、こんな人なんじゃないか、こういう感じの人なんじゃないか、
だからこんな風に歌えるのではないか、といった思いが頭をめぐるのだ。

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