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2011年4月 8日 (金)

天地真理25 証② 構成美「小さな日記」-1 聴き比べ

これまで天地真理さんの歌の魅力、不世出の証①として、
音色美について述べてきた。
さまざまな音響的要素によって、
彼女ならではの素晴らしい響きを作り出していることが、
多少なりともご理解、ご共感いただければ幸いである。
ただし、どんなにいい声を持っていても、
どんなにうまいテクニックを持っていても
それだけでは感動的な歌にはならないことはご承知のとおりと思う。
歌として成り立たせるためには、
さまざまな魅力的音響要素をどのように用い、どう組み立てていくか
また、歌詞の魅力と曲調の魅力を、どう織り込んでいくかが重要なポイントになる。
この観点から、次は迫ってみたいと思う。

天地真理さんの不世出の証②として、私は「小さな日記」という曲を取り上げたい。
アルバム「恋と海とTシャツと/恋人たちの港」に納められた、
1974年録音の歌である。
私にとってこれは、不朽の名唱と思える。
聴きすぎて飽きるのが怖く、聴きたいがなるべく聴かないようにしたい、
そんな歌である。

いうまでもなく音色美にあふれたこの歌において、
私にこれを不朽の名唱と思わしめ、
彼女の歌に、
この曲に限らず内在していて、
抗しがたい魅力的要素として端的に認識させられるものは、
「構成美」である。

  私はここで、複数の聴き比べを行い、
  かなり詳しくその印象を語ってしまうことになる。
  天地真理さんの歌の「構成美」について理解していただくのに
  これ以上の方法を思いつかなかったためだが、
  天地真理さんの歌の魅力を語る場である以上、
  比較として取り上げられた歌手にご心酔の方々にとっては
  不愉快な部分もあるかもしれない。
  少なくともここで取り上げた歌はすべて、
  私にとっては素晴らしいと思えるものばかりで、
  歌手としても第1級であることは疑いようがない。

「小さな日記」はフォー・セインツのデビュー曲で、
4番まである歌詞が、日記という形態をちらつかせながら、
ほほえましい回想と悲しい現実とが、
告白する口調で語られるものである。
ではまず、この曲のオリジナルであるフォー・セインツ、
そしてカバー曲である、小柳ルミ子さん、ダ・カーポさん、
森山良子さん、
による
4曲を聴いてもらいたい。
いずれも実力派の歌手による名唱といえるだろう。

フォー・セインツ
 男声2部合唱で淡々と歌われる。
 フォークグループというよりは、ビリー・バンバンに通じる趣がある。
 抑制の効いた表現、ムード歌謡的声の響かせ方が印象的だ。
 歌詞1番はユニゾンで、2番は独唱になり、
 途中からバリトンがメロディー、テノールが高音でハモらせる
という手法がユニークだ。
 3番からは輪唱まで加わり、4番でユニゾンに戻る、といった構成はなかなか面白い。

小柳ルミ子
 「瀬戸の花嫁」を思わせるイントロから始まるこの歌は、
 演歌的アプローチの典型である。
 声こそ初々しく、また必ずしも演歌歌手として修業してきたわけではないと思われるが、

 拍子に対して言葉の入るタイミングをずらす、テンポを揺する、といった
 演歌特有の手法が散見され、
 振幅の大きい強制型ビブラート、うねるような長周期ポルタメントなどが駆使されている。
 歌詞4番では絶叫型の声の張り方も聴かれ、
 心にあふれる思いをストレートに、力ずくで伝えようとする情熱型の歌唱といえる。
 
表現の幅が広く、ドラマチックに盛り上げる歌いあげ方は、
 声質は全く違うが、美空ひばりさん的と言ってもいいかもしれない。
 私には、この歌には少し重すぎる、大袈裟すぎる表現のように感じる。

ダ・カーポ
 きれいなビブラートで控えめな情感が感じられ、好ましい。
 女声は1~4番まで、しっとりとしてはいるが、驚くほど単調に繰り返されている。
 男声を加えることによって、
1~4番の歌詞の物語性に合わせた変化をつけようと
 意図されているかのようだ。
 しかし、男声の加わり方も、フォー・セインツの時のような変化の付け方はなく、
 女声と同じ音程の、ユニゾンの響きが淡々と続く。
 この淡々とした歌い方は、この歌手の一貫した魅力的個性とも考えられるが、
 日記につづられた過去、というソリッドなイメージが強調された雰囲気となっている。

森山良子
 出だしの一声から、胸騒ぎがするほどの悲しい歌である。
 声の響き、言葉の語り方すべてが、この歌の悲しさを最大限に強調する。
 ほほえましいはずの歌詞2番まで悲しい。
 3番では泣き声のような表現が入る。
 拍のずらし、テンポの揺らしなどは少なく、演歌とは違うアプローチだが、
 悲しいものはとことん悲しく表現する、悲歌(エレジー)フォークの真骨頂的な歌だ。
 悲しい思いにドップリと浸りたいときは、これだろう。

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コメント

真殿 こんばんは。
「小さな日記」を取り上げて頂きありがとうございます。
私もこの曲を約2月ほど前に聞いた時、引かれるものを感じたものです。原曲もおぼろげに覚えていて最初は、ああこの曲懐かしいと、思いつつ繰り返し聞くにつれてこれはもしかするとオリジナルを喰ってない?と思うようになったのです。
でも分析力の無い自分は何故これほどこの歌唱に惹かれる理由が解からなかったのです。
真殿の脳裏にはほぼ出来上がっているであろう考察を表明する作業はそれなりの苦労が有ろうかと思いますが、、
期待してます♪

tipさん

コメントありがとうございます。
お察しのように、いざ書くとなると噛みしめ噛みしめ言葉にする、
というような感じになります。
音色美編でもそうだったんですが、
ここでも、噛みしめれば噛みしめるほど、
その良さがしみじみとわかってくるような感じがします。
これは私としても本当に素晴らしい体験です。

そして私が渾身の力をこめて書いても、
真理さんの歌にはそんなものでは覆いきれない奥行きがあって
tipさんなりの”惹かれる理由”がむしろ漠と広がって、
やっぱり繰り返し聴きたくなると思います。

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