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2011年4月16日 (土)

天地真理28 証② 構成美「小さな日記」-4 歌詞3,4番

天地真理さんの1974年録音「小さな日記」の構成美について。

歌詞3番。
印象的な区切りのリズムとともに伴奏全体が半音上がり、
弦楽器の細かい動きも加わることによって、
重く悲しい現実を、曲調として強調する中、
彼女の音響的表現力が際立ってくる。
言葉一つ一つを伸ばす声に、音響的な長さと力強さが加わっている。
と同時に、これまで見られたかわいらしい、あるいは微笑ましいニュアンスは消える。

”やまにー”がいきなり、この曲では今までなかった真理倍音Ⅰ(U4kO6k倍音)で始まる。
これが一気に、音響的に、この不穏な歌詞を盛り上げる。
この、それまでの音色とのコントラスト付けは、音響構成的な素晴らしいうまさだ。
”はつゆきー”には、
話し言葉として、今までになかった明瞭さと、毅然とした印象付けもある。
”ふーるころに”や”帰らぬ ひとと”での声の伸ばし方も、
わずかではあるが明らかに、今までにない長さと強さを持ち、
歌詞に表れる意味を、音響効果で強調している。

(構成美②「言葉と音の表現バランス」)

以上のような、歌詞と連動した表現のうまさとともに、
細かく動くヴァイオリンの素晴らしい響きと、彼女の声の響きの見事な調和はどうだろう。

”にどとー”では声が伸びているにもかかわらず、不思議とうるさくない。絶叫でもない。
基本周波数+第2,3,7倍音の、彼女としては厚みより透明感の勝った音色が、
彼女としては大きめなポルタメントポルタメント・チョーキングを伴って響く。
話し言葉としては、口の開け方を少し控え目にした、わずかな暗さを湛えるが、
それまでのニュアンスとの対照性から、ここでの歌詞の意味がひときわ胸を打つ。
それとともに、”
わーらわぬ”の1ヶ所だけ、拍子に対して言葉を前倒しで発する。
これも、そのずらし量は他の歌手に比べればわずかだが、
これまで一度もずらしがなかったところで発せられるがゆえに、
無常の現実を表現するのにきわめて有効である。

そしてここまでの音響的緊張感から一転して、
曲調と一体となって弱まっていく”かれーのかお”のニュアンスは、
悲しさ、寂しさをこの上なくこみあげさせずにはおかない。

一度たりとも泣くような大袈裟な表現をしていないにもかかわらず、
悲しく寂しい過去が、胸に迫ってくる。
構成の威力というのは、こういうことだ。


歌詞4番。
伴奏がギターと弦だけになった中で歌われるこの4番の歌われ方は、
彼女の不世出の構成美を決定づけている。

1番の時を上回る透明感は、冷徹感とでも言うべき静かな厳しさを湛えている。
2度出てくる”ちいさなー”のニュアンスの、1番でのそれとの明確な違いに気付かれるだろう。
そこにはかわいらしさや、ほほえましさのかけらもない。
”こーとーでした”と、そのあとの”にどとーかえらぬ”の響きは、
3番の、重い現実を印象付ける、力のある響きと類似性はあるが、
3番にあった、
拍子に対する言葉の前ずらしは、ここにはもうない。

歌詞としては、ソナタ形式の再現部のように、1番と同じ内容の、告白調の語りに戻るのだが、
言葉と音響のニュアンスは1番とは全く異なる。
厳格なまでのリズムの端正さと、透徹した音色の響きが、
過去を昇華させるかのような、あるいは小さな日記を閉じて再び過去を封じ込めるかのような、
威厳と格調を湛えている。

このような各番の印象付けは、
歌詞としても、音楽としても、見事な起承転結の体をなしており、
見事な構成美となっていると思うのだ。
しかもその起承転結の豊かさが、端正な控え目な美の中に見事におさまっている。


最後のフレーズ、”わすれたーはずのー”の、実に言葉をいつくしむような語り方は、
何と説明したらいいのだろう。
”こーい”では、ビブラートが
真理倍音Ⅱ(O10oU4k倍音)から一旦純音にまでなるが、
”でした”の最後は、自励型ビブラート
真理倍音Ⅱ(O10oU4k倍音)のまま最後まで続き、
うつろな
寂寥感を漂わせつつも、ぱたりと日記の扉を閉めるかのような
淡然とした
印象を残して終わる。

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コメント

真殿の分析力に深く感銘しました、そしてそれを的確な言葉で我々に示して頂き、本当に有難うございます。
私が今年に入ってから初めて聞いた真理さんの「小さな日記」を聞いた時の感動(3番4番に理由が有る事は感じていあした、しかしその理由を説明することが難しいのでした)の理由をこの記事を読む事で一気に氷が昇華したような気持ちです。

この真理さんの「小さな日記」は確かにしょっちゅう聞く曲では無いですね。
安易な気持ちで聞きたくない歌声なんですよね。
DISC6の最後に、ストンと落とされた曲です、原曲は知ってはいたけれどこれほどの歌唱に出合ったのは初めてでしたから。。

tipさん

同じように感じておられる方がいるということは
うれしいもんですね。
こういう声が真理さんにも届かないかな。

いつもながら、真さんの緻密な分析に感服しました。
私は一度も実際の真理さんの歌唱を聴かずに読みましたが、真さんの言葉からくっきりと真理さんのうたが頭の中に聴こえてきました。
「その起承転結の豊かさが、端正な控え目な美の中に見事におさまっている」という言葉は真理さんのうたのありかたを端的に表現していると思います。

ひこうき雲さん

歌詞の個人的解釈にまで踏み込み過ぎて
少々反省しております。
若輩者の勇み足とお許しください。

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