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2011年3月26日 (土)

天地真理19 証①音色美 「好きだから」-14(周波数成分5 真理倍音Ⅰ)

さて、いよいよ天地真理さんの調波構造(周波数成分)を見ることにする。
「好きだから」より

私は記事「天地真理5」で次のように書いた。

”わたしはおよめにー”の所の、母音”アーオーエイー”が続いて響く所、喉の奥の方から共鳴している”「アーオー”の響きから、鼻と胸に共鳴している”イー”へ続く響きがなんとも心地よい。

まず私が、天地真理さんの歌声において最も心地良いと感じ、
不世出の音色美と主張したい”わたし
はおよめにー”の部分の調波構造を次に示す。

Voiceprint_oyomeni

念のため言っておくが、赤線で囲んだ部分の白い線は楽器音ではない。
ポルタメント、オーバーシュート、チョーキングなどが高周波成分でも相似的に出ており
明らかに歌声の周波数成分である。

基本的特長として言えることは、
天地真理さんの声は、裏声(ファルセット)であるにもかかわらず、
倍音が多いということである。

グラフ中の”およめにー”の部分を見ていただきたい。

第1に、基本周波数から4kHzまで(4kHz未満)の成分が、
ほぼ満遍なくはっきりと出ている。
この部分にはオ、エ、イ、の三つの母音が含まれているが、
母音の描き分けと聴こえやすさのための最低限の倍音を持つ鮫島有美子さんと逆で、
母音を描き分けるために多少弱まったりする成分がある以外は、最大限の倍音を持つ声だ。
これは松田聖子さんのところで見たように、
艶のある厚みのある音色を作り出す。
ただし松田聖子さんや小柳ルミ子さんの声と異なる点は、
一番低い基本周波数がしっかり出ていることである。
ファルセットでありながら、細くなく、おなかに響いているような、
極上の地声に近い厚みがある声は、
この基本周波数がしっかり出ていて、
なおかつ4kHzまで(4kHz未満)の成分が満遍なく出る調波構造に
その理由がある。

第2に、ここが松田聖子さんと決定的に異なるところだが、
3kHz台ははっきり出ているが、4kHz台、5kHz台の成分が非常に弱い。
すなわち、聴覚が敏感な3kHz付近はしっかり出ているため良く聴こえるが、
サイレンのように響きすぎない声といえるだろう。。
やわらかい音色を作り出す決定的条件がここにある。

第3に、6kHzから9kHzにかけて、4kHz以下ほどではないが、
今まで紹介した歌手の調波構造ではほとんど見られなかった
はっきりした高次倍音がそろって出ている。
私は発声法のことはよくわからないが、
鼻から上に共鳴したと思えるような、微かにツーンとくる、
天地真理さん特有のあの声の秘密がここにあると思う。

この6kHz以上の成分は、小柳ルミ子さんの声でも部分的にうっすら見えることもあり、
松田聖子さんの声でも、よく見れば部分的に見えることはある。
他の歌手でも、アルバムでの歌唱などを良く調べれば、
これに近いものがあるかもしれない。
しかし私が魅力的と感じた部分で、ここまできれいにはっきりと出た調波構造は、
上記1,2,3のようにそれぞれの機能が理解され、
それが歌声の印象と合致しており、私にとって納得のいくものである。

私はこの驚異の調波構造を、真理倍音Ⅰ(U4kO6k倍音)と名付けたい。
U4kO6kは Under 4kHz、Over 6kHz というつもりである。

当然のことながら、真理倍音Ⅰ(U4kO6k倍音)はこの歌だけで出ているのではない。
エコーが強くかかった、マイクが遠い感じの録音では高次倍音が見えにくいことがあるが、
前に触れた、1973年録音の「空いっぱいの幸せ」でも、
1976年ライブ録音の「水色の恋」でも、はっきりと出ている。
このライブ録音「水色の恋」では、ギター弾き語りであるために伴奏音が小さく、
声の調波構造がひときわくっきりと出るのだが、
驚くことに、声を張って大きく出さない部分でも真理倍音Ⅰ(U4kO6k倍音)が
はっきりと見られる。
「水色の恋」についてはほかにもいろいろと語りたいことがあるので、
項を分けて記すことにするが、その時にその調波構造にも再度触れたいと思う。

倍音がもっと豊富に出る歌手はほかにもいるだろう。
もっと高次の倍音が強烈に出る歌手もいるだろう。
しかし、
艶と厚みがあって良く響くが (=基本周波数と4kHz未満の倍音がほぼむらなく出る)
あくまでやわらかく (=4kHz台、5kHz台が弱い)
それでいてツーンとした微かな味付けがある (=6kHz~9kHzが弱く出る)
天地真理さんの声の音色美は、
この真理倍音Ⅰ(U4kO6k倍音)が核となっていると私は主張したい。

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コメント

着々と進んでいる解析を、楽しんで読ませて頂いてます。
私には、科学的に検証する能力もないのですが、真理さんの声には
目的の音程より低い、支える響きを感じるんです。
例えば、小さいスピーカーでなく、大きなスピーカーの響き。
AM放送の音ではなく、FM放送の音。
木琴ではなく、マリンバの音。
と、言った違いです。
声で言えば、あのマリア•カラスの独特の発声に近い様にも聴こえます。

つまらない独りよがりの、感想ですが...。
これからも、宜しくお願いします。

sakura6809さん

ようこそ。
お読みいただきありがとうございます。
「支える響き」とはいい表現ですね。
受ける印象をどう言葉で伝えるか、いつも苦慮します。
私は発声法はよくわからないのですが、
共鳴ということで考えると、声は
体のいろいろな筒状の部分で共鳴するのではないかと思います。
ファルセットなのに一番低い基本周波数がしっかり出るところが
「支える響き」につながっていると思うのですが、これは
お腹のほうに共鳴しているのではないかと想像します。
「大きなスピーカー」とは言いにくいですけど。

中音域以下での楽器の基音成分は案外、弱いと聞いたことがあるので
真理さんの声は、おっしゃるように基音の響きが、しっかり充分あるから豊かに
響くのでしょうね。

真さんに触発されて、手元にある音響関係の本を引っ張りだしてきました。
「楽器の科学」「楽器の物理学」「音楽音響学」「楽器の音響学」「音楽の科学」
ちょっと、開いて眺めただけで、頭がいたくなりそう。そういえば、まじめに読んだこと無かった。
その上、音声の専門書は一冊もなかったし。

メンドクサイとこはお任せしますので、要点だけやさしく解説お願いします。
などと、都合のいい事を考えているsakura6809でした。

真さん
見事な分析を読ませていただきました。

私は音声学はまったくわからなくて、倍音というのも言葉は知っていてもよくわかっていないのです。それでも、真さんの分析を読むとストンと胸に落ちる感じがします。
sakura6809さんの「支える響き」というのもいい表現ですが、私の言葉で言えば真理さんの声の<豊かさ>がどこからくるか、わかったような気がします。
私はオペラが大好きで、そういう時はクラシックの歌唱がやはり一番合うのですが、クラシックの歌手が唱歌やポピュラーソングを歌うと、蒸留水のようなそっけなさを感じてしまいます。それに対し、真理さんの声は基本をクラシックの発声におきながら、ミネラルの入った水のような<味>を感じるのです。その秘密を見たような気がします。

sakura6809さん

引っ張り出された本のうち、3冊は見たことがあるような。
正直言いますと、私はピアノの音が好きで、
楽器の音の魅力を語ろうとすると、
そのような本のお世話になることになるかもしれません。
それについて書きたいとも思うのですが、
歌詞がない分、楽譜とかを参照しなければならなかったりとか、
今よりさらに難渋しそうで躊躇しています。
でもそのような方面に踏み込むと、
sakura6809さんから別の視点の反応が得られそうな気がして
怖いながらも、そそられます。

ひこうき雲さん

フォローしていただきありがとうございます。
まさにそういうことが言いたいんです。
理系人間の舌足らずをよくぞ補ってくださいました。
classicalないき方を頑なに守っている部分があると思う反面、
独特の、ならではの味がある、特異な存在です。
真理さんの歌う唱歌をもっともっと聴きたかったです。

お持ちになっているかもしれませんが、安藤由典氏の本は40年も前の著書にもかかわらず、今でも充分過ぎる内容です。
当時、ピアノのインハーモニシティーについての説明は、他ではほとんど無かったし、パソコンが無かった時代にもかかわらず、多数のソノグラムの写真や図画は眺めるだけでも、説得力がありました。
新版となって、現在でも出版されている様です。

そうそう、真理さんの声ですが、真さんの解説を見ながらCDを聞いていると、その曲その曲で違った新しい魅力が発見できて、本当に何度も飽きずに繰り返し聴き入ってしまいます。

sakura6809さん

「安藤由典氏の本」、アマゾンに出てますね。
さすが楽器の専門家、「ピアノのインハーモニシティー」とは。
調律するときは、そういうことも考慮してこうする、というのがあるのでしょうか。
私はそこら辺はよくわからないのですが、
振動学をかじった経験上、弦の固定端の周りの扱いは
計算と実測を合わすのに苦労するところで難しいだろうな、という感覚があるぐらいです。
アマゾンを見ると、それに関連した本がぞろぞろあり、
専門家っていろいろな分野にいるのだなと驚かされます。

私は音響の専門家でも、音声の専門家でもなく、
ただ真理さんの歌が心地よいものだから、
なぜだというところを、
皆さんがいろいろな経験や、感覚を頼りにされるのと同様に、
現在は周波数解析ソフトの分析結果を頼りに
自分の頭で考えて、勝手に納得している状況なのです。

でも、sakura6809さんと同じで、
これほどこねくり回すといい加減嫌になるかと思えばむしろ逆で、
新たな視点ができて、思わず聴きほれるという状況が止まりません。
うれしいことです。

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