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2011年2月25日 (金)

天地真理13 証①音色美 「好きだから」-8(周波数ゆらぎ~ビブラート1)

「好きだから」の”しろいー”の部分に見られる第四の周波数ゆらぎは、
ビブラートである。

天地真理さんのビブラートは大変心地よい。
それはなぜなのだろうか。

再度、”しろいー”の部分の音と周波数成分を示しておく。


Voiceprint_shiroi

ビブラートは、
クラシック型(無意識音程型)、演歌型(意識して入れる音程型)、フォーク型(音量型)
に分類可能なのだそうだ。
分類の中身はともかく、音楽のカテゴリーまで規定するのは少し強引だと思うが、
さしずめ天地真理さんのここでのビブラートは

クラシック型(無意識音程型)だろう。

図中に記入した、ビブラートという部分を見てもらいたい。
私が考える、この
ビブラートの特長は、
ビブラートがない部分と、かかる部分との長さの比(ここでは2対1ぐらい)と、
ビブラートが急に大きく揺れず、徐々にその振幅が増えていく点である。

天地真理さんは、いろいろなタイプのビブラートを使うが、
高音部で声を強めに伸ばすときは、大抵このタイプのビブラートを使う。
私はこれを大変心地よく感じる。

ビブラートがかからない部分があることによって、
前項で述べた「軽微ポルタメント・チョーキング」が使えるし、
後で述べる音色の魅力も認識されやすい。
またビブラートのない声が伸びた後、自然な感じのビブラートがつくことにより
自然に近いゆらぎを感じることができる。

振動の分野で、自励振動というものがある。
外部から周期的な刺激がないのに振動が大きくなる現象で、
工学の世界では事故や故障の原因になることが多く、忌み嫌われる現象だ。
学問的には解明する腕の見せ所でもあり、学術論文のネタになる。

  自励振動でない、持続的、あるいは発散的振動は、強制振動と呼ばれ、
  自動車のエンジン(の回転)など、明らかな周期的外力があって、
  揺れるものである。

風によって吊り橋が大きく揺れ、破壊してしまったり、
蒸気や流体を運ぶ配管が大きく揺れて損傷するのも、
この自励振動による場合がある。
一方、自然界では、むしろ心地よいゆらぎが、
この自励振動で起きることが多い。
風が吹いて葉っぱが揺れる現象や、ろうそくの炎がゆらぐのもそれだ。
バイオリンや木管楽器の発音メカニズムも自励振動である。

私が自励振動を思い出したのは、
”いー”の部分で見られるビブラートの振幅の増加の仕方が

自励振動の開始の仕方に似ているからだ。
自励振動の開始時には、その振幅は直線状に(右広がりの三角形状に)広がっていく。
ここでのビブラートの揺れ始め方がまさにそれだ。

私は、ビブラートの発声メカニズムに詳しくないが、
明らかに、強制的に揺らしているようなビブラートもある一方、
グーと声を伸ばしたあと、少し力を緩めると、
ちょっとした音程変化の擾
乱をきっかけに自然に揺れが始まり
喉を取り巻くの筋肉の弾力と重さで決まる固有振動で振動する、
という、
自励振動型のビブラートが起きるのではないだろうか。

もしこのような
「自励型ビブラート」があるとすれば、
天地真理さんのこの例のビブラートがまさにそれで、

自然界の心地よいゆらぎを思わせるため、心地よく感じるのではないか。

これと対照的な比較として、小柳ルミ子さんが「瀬戸の花嫁」で用いた
ビブラートの例を示してみる。

Voiceprint_koyanagi1

この曲の最高音部で出されるビブラートは、
「強制型ビブラート」とでも呼べるものの典型である。
最高音に上がった初めから、いきなり大きな振幅で揺れ始める。
高音で声を張っているときにこれを大きく揺らすのは
喉の周りの強い筋肉が必要と思われる。
この方が技巧派歌手として認められる所以の一つだろう。
自然というよりは強制的な印象から、
たぎる思いが直接的に迫ってくるような感じを抱かせる。
いわゆる絶唱型の歌手が良く使うビブラートといえるだろう。


天地真理さんも「強制型ビブラート」を使うときがある。
同じく「好きだから」の”あかーい”の部分の歌詞1番と2番を聴き比べると面白い。
まず1番から。

Voiceprint_akai1

”かー”の部分は「自励型ビブラート」、
”い”の部分は長めのポルタメントでビブラートなしとなっている。
やさしく、少し甘い感じがする。

一方、2番は、

Voiceprint_akai2

”かー”の部分は小柳ルミ子さんの例ほど急発振ではないが、
”かー”のビブラートの初めの部分から振幅がかなり大きく、
「強制型ビブラート」に近い。
そして”い”の部分は短めのポルタメントの後、
これも強制型ビブラートとなっている。
音色の変化もあるが、1番よりもイキイキ感が強まっているように感じられる。
とりわけ”い”の部分など、短めのポルタメントと「強制型ビブラート」の効果で、
キリリとし印象を受けるがいかがだろう。

「自励型ビブラート」と「強制型ビブラート」の使い分けによって
歌の印象が大きく変わる。
とりわけ、「3分の2伸ばし」+
「自励型ビブラート」は
声そのものに魅力がある歌手が、
聴かせどころでよく使うものだと思う。
天地真理さんの場合、その声質と相まって、
大変心地よい響きとなっている。

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天地真理」カテゴリの記事

コメント

真理さんはビブラートを本当にいろいろ意識的に使い分けていると思います。
個人的には、「愛になやむ頃」の歌の時の様に、発音と同時にビブラートが始まるほうが好きなんですが、これは、学生時代に声楽で習ったビブラートのかけ方だと思います。
一方、ノンビブラートで伸ばした後半にかけるビブラートは、ポピュラーの歌のレッスンの中で身につけた歌い方の気がします。

sakura6809さん

こんにちわ。
音楽の専門家からのコメントありがとうございます。
ビブラートについてはいくつか取り上げてみたいと思います。
「愛になやむ頃」で聴かせてくれたビブラートは
私も信じがたいほど素晴らしいと思っています。
我慢できずにこのシリーズの後半で取り上げてしまいます。
sakura6809さんの受け取られ方と同じかどうかわかりませんが、
またその時は率直なコメントをいただけるとありがたいです。

真理さんが学生時代に学んだこと、ポピュラー時代に学んだことなどを
新しくできるファンクラブの会報等で取りあげてもらえると
大変興味深いと思います。

こんばんは。私、音楽の専門化なんかじゃありませんよぉ。
でも、音にだけは関心あります。
そんな訳で、真さんの真理さんの歌へのアプローチは興味深く読ませていただいてます。
耳からだけの情報が、目に見えるかたちで解説されると、これほど納得させられるものはないと思います。
次なる展開をさらに期待していますので、宜しくお願いします。

sakura6809さん

音もしくは楽器の専門家といった方が正確だったでしょうか。
天地真理さんの歌の魅力について発言される方は、
私の目につく限り、音や器楽に詳しい、あるいはご執心の方が多いと思われます。
これは真理さんの歌の特質と関係があると思っています。
その辺についてもいずれ書きたいと思っているのですが、
だんだん説明しづらくなっていくような気がします。
よろしければお付き合いください。

こんにちは。tipです。
唐突ですが、真殿は真理ちゃんの曲で一番好きなのは何て言う曲ですか?

こんにちは。tipです
真殿のブログ拝読させていただき、自分がなぜ真理さんの歌声に引かれたのかが解かりました。
正に目の前の朝靄がはれる気持ちです。
これ!これなんだ!真理さんの歌声に癒される理由が。
作為的でなく自然と出てくるビブラートの心地よさ。
これほど明快に解説していただき本当にありがとうございます。

tipさん

ようこそ。ありがとうございます。
一番好きな曲を1曲と言われると大いに困ります。
tipさんのBlogで言及されていた曲について
「不世出の証②」で取り上げる、
とだけさせといてください。
これからもよろしくお願いします。

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