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2011年2月 6日 (日)

天地真理10 証①音色美 「好きだから」-6(周波数ゆらぎ~チョーキング)

「好きだから」の”しろいー”の部分に見られる第三の周波数ゆらぎは、
ポルタメント・チョーキングとでもいうべきものだ。

再度、”しろいー”の部分の音と周波数成分を示しておく。

Voiceprint_shiroi

図中に記入した、ポルタメント・チョーキングという部分を見てもらいたい。
基本波ではわかりにくいが、第6倍音でははっきりと右上がりの緩やかな傾きが見える。
これがある音程に達した所で、上下に揺れるビブラートが始まっている。
このある音程は、グラフから読み取っても、正確に
ソ#の第6倍音(3327Hz)であって
1Hzもずれていない。

つまり、”ろ”→”いー”と続く所では、
短前打音→ポルタメントで、正しい
ソ#の第6倍音(3327Hz)より約50Hz低い音にまず到達し、
そこからゆっくりと
正しいソ#の第6倍音(3327Hz)の音程に達し、ビブラートにつながっている。
第6倍音での50Hzは、基本波では8Hzほどの周波数差である。
人間の耳は2~3Hz程度の周波数差はわかるらしいので、
注意して聴けば音程変化として認識できるかもしれない。
しかし、”い”の部分の基本波554Hzは、その半音下の音との周波数差が31Hzなので
ピアノで言う半音(鍵盤一つ分)の違いの1/4ぐらいの微妙な音程変化である。

チョーキングという用語を歌の世界で使うと歌手が窒息しそうだが、
本来はギターの奏法で、弦を押さえたまま上にずらして弦の張力を高め、
音程を変える奏法である。
チョーキングというのは日本のみで、英語ではベンディングというらしい。
ポルタメント・チョーキングは、ゆっくりと音程を上げるチョーキングとのことだ。
声楽の分野では別の呼び方があるのかもしれない。

私がこれを聴いてチョーキングという用語をつけたのは、
次のような曲を思い出したからである。
(The Ventures   The House of the Rising Sun)

リードギターの Nokie Edwards はアーミングをあまり使わない人のようで、
ここでもチョーキング(ベンディング)によって音程をかえている。

通常のポルタメントも多用されているが、それよりずっと長い周期の、
そして音程変化がより小さく、正しい音程に近づいていく音が印象的だ。
この奏法のメカニズム上、ここでの音は到達点の音程が微妙で
正しい音に届くようで届いていない。
それがかえってこの曲の、何か満たされない気持ちを表現しているように思う。

周波数の変化は次のようになっている。(クリックで拡大)

Voiceprint_risingsun

横軸の時間幅は、上記の”しろいー”に合わせてある。
基本波が低いので、その倍音がせまい間隔でたくさん出ているが、
チョークする時間はほぼ同じの、右上がりの周波数変化が見える。

歌でもこのような音程変化は時々聴く。
演歌の一部の歌手は、このような終点の音程が定まらないタイプの

ポルタメント・チョーキングを意図的に使うことがある。
浪曲の影響なのかもしれない。

これに比べ、天地真理さんのポルタメント・チョーキングは、
終点の音程が正確で、変化する音程が小さい特徴を持つ。

”しろいー”の部分を聴いて私が受けた、
広がり感、奥行き感は、
この周波数ゆらぎによるものと思う。
声がこの曲の中で一番高い音程に達することによる高揚感の中に、
行きつくべき所に微か届かないところから始まり、
ゆっくりと正しい場所に到達している音響的装飾が、
距離感を与え、
奥行き感になっているのではないだろうか。

天地真理さんは、このようなポルタメント・チョーキングを他の曲でもよく使う。
音程が高くなり、声を伸ばしているところで、
広がり感、奥行き感を感じるところがあったら注意して聴いてみていただきたい。
微妙な音程変化「軽微
ポルタメント・チョーキング」となっているはずだ。

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天地真理」カテゴリの記事

コメント

真さん
こんばんは

今回も非常に興味深く読ませていただきました。
この「しろいー」というところは独特な歌い方をしているという印象はあったのですが、どこがど
うなっているか、よくわからなかったところです。
こう解析されてみると、こういうことだったのか、と納得できました。せりあがっていくようなポ
ルタメント・チョーキングの部分がそれだったのですね。
真理さんのうたには、<天地真理節>といっていいような独特な歌い回しがいろいろあります
が、これはその一つですね。

ますますおもしろくなってきました。

真さま こんにちは。。

もう、ポルタメント・チョーキング を探し当てるのに夢中です~ (笑)

真さまの解析を拝見するようになって、耳が肥えてきたみたい。。
一音一音に意識を集中して、歌を味わうようになりました !!

天地真理さんという歌手は、驚くべき才能を持っていらっしゃったこと。
その完成度の高さは、最新の科学的アプローチによる分析で解明可能であること。

真理さんが貫かれた歌唱法に着目され、
論理的にも、正しい評価へ結び付けていける真さまのような方が、ファンの中から
手を挙げてくださったことは、ほんとうに意義のあることです!

天地真理さんには何よりもまず、当時は見過ごされていたといえる、
歌手としてのご自分の本当の実力が 評価されていることを知って頂きたいし、
また可能な限り、多くの人々に真価が伝わっていくことが理想的だと思います。
それにより真理さんご自身が、ある意味において納得され、今は今と割り切って、
清々しい気持ちで再び歌に取り組むことができるのでは、と感じられるからです。

「歌を続けていきたい」 という真理さんのご意志があったからこそ、
応援の質も大きく変化するようになり、ファンのみなさまの心が一つにまとまってきましたね。

真さまのご尽力は私には計り知れませんが、
これほどまでに心のこもった贈り物をされていることに、尊敬の思いです・・☆
お読み頂いてありがとうございます。

もう一つ、書きたかったのでした。。

真さまの分析を参考にして、あらためて真理さんの歌を注意して聴いてみると、
これまで、なぜかとても心地良くて 懐かしさや幸福感が感じられた作品のなかに、
大切なヒントが織り込まれていたことに気がつきます。
それによって 歌の味わい方、楽しみ方が更に深まりました。

その中で、
私自身の好みで 素晴しいと思える一曲あげるとすれば、「ブランコ」 という歌です。
一番の歌詞である 「夕暮れの公園の」・・ 高揚感のピークといえるこの部分には、
天地真理さんの世界、歌唱におけるその特性が凝縮されているかのように、立体的な
響きが感じられます。

どうぞこれからも、無理のない範囲でご考察を進めていかれてくださいね。
ありがとうございました☆

ひこうき雲さん

ひこうき雲さんのHPの記事を読むと、
いろいろな言葉に豊かなニュアンスを感じ取っておられていて、
なかなかその域に達しないのですが、
こうやっていろいろ分析する過程で
気づかされることも多いです。

私は歌も音主体で聴く傾向が強く、
歌詞も、音色やリズムなどと同列の一要素のような比重なのですが、
最近は言葉のニュアンスをずいぶん注意して聴くようになりました。
真理さんの、露骨でない、微かだけど豊かなニュアンスはいいですね。

愛さん

「ブランコ」の”夕暮れの公園の”の部分では
ポルタメント・チョーキングは使っていないようですね。
きちんと解析していないのですが
声の音色変化を巧みに使っているように思います。
こういうのってテレビとかでバンドがドンチャカやっていて
観客がワーワーやっていると全くわからないでしょうね。
そういうところを主戦場にしていながら
こうやって残すものは残した真理さんは大したもんだと思います。

証シリーズが終わったら個別の歌を分析してみたいと思います。
愛さんがあげられた曲もいずれ取り上げます。
各記事で思い当たる曲があれば、またあげといていただけると
大変参考になります。
よろしくお願いいたします。

ほんとうに・・。
いかなる場面においても、ご自身の うたの心に忠実に、
精度を極めた歌唱に徹していらっしゃる姿勢は凛々しいですね。

身体的には大きなリスクと隣り合わせであったと考えられますが、
天地真理の歌はアートであること、非常に高い芸術性を含んでいることが
証明されるとすれば、真理さんの努力が本当の意味で報われる日が
訪れたのだなあ・・という感想です。

こちらでも私、空想三昧になりそうだわ~♪
どんなことも気兼ねなくお尋ねできるので、心強いです!!

愛さん

お尋ねされたことに対してまだろくに応えてないように思います。
最初はもっとさらっと①、②、③といくと思っていたのですが
やっぱり人に見られると思うとこちらも真剣に考えるもんですね。
いろいろご感想を伺うと、気づきとか妄想とかも
どんどん増えていきます。
結局私がこうだろうと思うこと以上のことは書けないんですが。
これからもよろしくお願いします。

真さん、こんばんわ

いつも真さんや、ここにコメしている人達のブログ、HP、チャンネルを見させて頂いています。
積極的に目に見える応援は出来ませんが、その様な○○万人の真理ちゃんファンがいますので、頑張ってください。

実は私も、皆さんの活動によって動画等を目にする機会に恵まれ、中学生の時に夢中になった理由とは違う感動に包まれ、30年もの空白期間を悔い、以前にも増して真理ちゃんを応援したい衝動に駆られた復活ファンです。

で、今日は真理ちゃんの歌の事で、とても嬉しいことがあったので、書込んじゃいます^^

私には20才と16才の娘がいるのですが、当然我が家の車のCDは真理ちゃんオンリー。2人とも否応にも聞かされる事になるのですが、そんな2人がこんな事を言いました。

 16才娘「でも、普通に歌が上手いよね」
 20才娘「うん、お腹から声が出ているっていうのは、こういう事かもねぇ」

泣いちゃいました。何の先入観も無い2人から、こんな嬉しい言葉を聞けるなんて・・・。ただ、これだけですが、この言葉の持つ意味は自分にとって宝となるでしょう。

これからも真さんを始め皆さんの活動を影ながら応援します。
あ、真理ちゃん・真保ちゃんの次に応援かな^^

春風さん

はじめまして。
まず言えるのは、2人の娘さんがいい子だという事でしょう。
お父さんが気に入っている歌手を素直にほめるなんて。

応援ありがとうございます。
おそらく私も春風さんと同年代で
全く同じ心境です。
ついでに私も応援する側です。

イッチーです。ポルタメント・チョーキングって、、、素晴しいネーミングですね。 「あの歌手は歌が上手いね」って言われている人たちは、チョーキングをやっていると考えられますね。 それを、天地真理さんはファルセットの高音部分でやってのけるのだから、たいしたモンです。。。この時のパワーの源である「腹筋力 & 声帯」は相当な凄さだと思います。
真さんの、科学的な分析力には感服します。

追伸、テレビのお茶特集の影響で、昨日も徹夜でした。睡眠時間が4時間半。それが3日間もつづいて、、、
    天地真理さんの「3時間睡眠」よりも、寝ているかな (笑)
でも、年をとると回復力が遅くなるなぁ~。

イッチーさん

睡眠時間を削ってのコメント、誠に恐縮です。
ポルタメント・チョーキングはウィキペディアに出ていた用語です。
歌の分野で使われているかどうかは怪しいですが。

またまたお茶特集でうれしい悲鳴でしょうか。
前向きな時は少々の無理も大丈夫とは言いますが、
お体に気をつけて。
Blogではお茶のことを語るようで、真理さんに話をもっていくあたり
さすが熱いです。

イッチーです。 お返事を有り難うございます。 で、ノーキー エドワーズさんのチョーキングは、最終到達地点の音程までいっ居ないなあ。。。と、エレキフアンの私も、おぼろげながら感じていましたが 今では、それを普通に聴いてしまっています。
と言う事は、最終音程の出ていない音は、いつの間には 出ているかの如く 心で聴いている自分が居ます。

でも、最終音程は、出ていた方が、聴きやすくて安心していられます。
天地真理さんの歌声が「癒しの声・歌」は、そのためだと考えられます。
こんな発見も、真さん の音楽解析があればこそですね♪♪♪ 有り難うございます。

イッチーさん

真理さんは、ポルタメントとかいろいろ使いますが、
少なくとも公式録音に残しているものでは、
おっしゃるように最終到達音程がしっかりしていたり、
前短打音などの拍がきちっとしていたりして、
そういうきちっとした音楽構造を守った上で、
ポルタメントや、音色の変化などでニュアンスをつけているところが
私はすごいと思うし、
今こうやって心酔している理由でもあると思います。

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