« 天地真理4 不世出の証 | トップページ | 天地真理6 証①音色美 「好きだから」-2(音圧) »

2011年1月 4日 (火)

天地真理5 証①音色美 「好きだから」-1

 不世出の証を示す1曲目に、「好きだから」(後藤益子 作詞、森岡賢一郎 作曲)を選んだ。セカンドアルバム「ちいさな私・ひとりじゃないの」に含まれる1972年録音の歌である。意外と思われる方も多いかもしれない。他の2曲はスンナリ決まったが、この曲に決めるのは多少難航した。これに行きつくまでに15曲ばかり候補を選んでいたが、この曲はその中にすら入っていなかった。迷った挙句に、プレミアムボックスを最初から聴き直し、出くわした。選んだ今、私は多少ほくそ笑む気持ちがある。大方の予想を覆したのではないかといういたずら心がくすぐられるのと、私が言いたいことを最も端的に表しているように思えたからだ。

 なんと他愛のない歌詞だろう。「好きだから 私はお嫁に行きたいの」。この曲を家族と一緒に聴いていたら、僭越にも「流行歌手はつらいね、こんな曲を歌わなければならないって」と言われた。ある意味当たっている。普通の大人ならちょっと恥ずかしくて歌えない、そんな類の歌である。言ってみれば、底が抜けている。底抜けに明るく、底抜けに一途である。危ないほどに。

 この天地真理セカンドアルバムは、全曲オリジナルなのだそうだ。そういう場合、アルバムの間つなぎに、軽いノリで作られた曲かもしれない。他の歌手のアルバムでも、そのように感じる曲が時にある。

 ここまでこの曲のくだらなさをあげつらっておいて言うのもなんだが、私にとってこれは大変魅力的な歌だ。何度も聴いてしまう。

 作曲者の森岡賢一郎という人は、デビュー曲「水色の恋」の編曲をしている人である。また小柳ルミ子さんの初期のヒット曲の編曲をすべて手掛けている。渡辺プロ専属の編曲者、作曲者であったのかもしれない。そのような立場でこの人は、ある意味では、まだ手垢の付いていない天地真理の音楽的特長を、先入観なく見た人ではないかと思う。そのような人が、天地真理の歌声の最大の魅力の一つに気づいていて、それを端的に示す曲を作ったのではないかと思える。わざと他愛のない歌詞を持ってきて。

 この歌が示す、天地真理の「不世出の証①」は、その声質、声の出し方である。私は、この歌で聴けるような、彼女の伸びのいい、それでいてやわらかく、ちょっとかすれの混じった、明るくむらの少ない声が好きだ。

 具体的に見ていくと、「わたしはおよめにー」の所の、母音「アーオーエイー」が続いて響く所、喉の奥の方から共鳴しているアーオー」の響きから、鼻と胸に共鳴しているイー」へ続く響きがなんとも心地よい。そして「あかーい...」から続くフレーズは、2小節ずつの言葉の単位ごとに、1小節程度伸ばし続ける声が連続する。「だいてー」、「しろいー」「すなはまー」、「かけてー」、いずれも程よい艶と透明感とがあって、それでいて細く窮屈でなく、広がり感のある、開放的な素晴らしい響きだ。

 この素晴らしい響きが表れるためには2つの条件がある。一つは、その曲のサビの部分の音程がファ(350Hz)から上のレ(587Hz)ぐらいまでとなること。彼女はもっと高い音(公式音源では高いミ(659Hz))まできれいに出せるが、ここで言っているような倍音を伴った味のある声は、この範囲にある。もう一つはそこでの音の長さが2分音符から全音符(1小節分)ぐらい伸ばせることである。

 作曲者、森岡賢一郎は、天地真理の声の最大の魅力を認識し、上のような条件を極力単純に満たす曲を作って、彼女の魅力を我々にストレートに示すことに成功した、といえるだろう。30年の時を超えてこの歌を愛聴し、ここまでグダグダと長文を書いて恥ずかしげもなく晒す人間が少なくとも一人いるのだから。

 私が天地真理を聴くときの半分は、この声を期待し、この声がどういう場面で、どういう風に響くかを聴いている。天地真理の歌の魅力の核であって、彼女以外の歌手ではめったに聴けない、とびきり極上の独自性がここにある。私はこの証①を「音色美」と名付けたい。

 では、なぜ私はこのような声を心地よいと感ずるのだろうか。私は理系の人間で、工学を生業としてきた関係上、何かを理解しようとしたときにデカルト的アプローチ、すなわち細かい小部分に分かつ、解析的方法を取りたくなってしまう。多少強引ではあるが、天地真理の歌声を音圧波形にし、周波数分析してみた。その結果を次に紹介したいと思う。ただしこの結果にあまり期待しないでいただきたい。芸術にデカルト的アプローチを取るとまず失敗する。迷宮に入りこむのみである。アインシュタインですらこう言っている。「唯一価値あるものは直観である。」と。

« 天地真理4 不世出の証 | トップページ | 天地真理6 証①音色美 「好きだから」-2(音圧) »

天地真理」カテゴリの記事

コメント

真さん
こんにちは

「好きだから」を取りあげていただいて、とてもうれしいです。
私もこの曲は大好きで、「白いバラの道」「夢のチャペル」とつづく3曲メドレーは初期の真理さんの美点が最高に発揮されていると思います。
「好きだから」は真さんの言われるとおり、のびのびした声で気持ちよく歌っていて、聴く者の心も解放してくれますね。

つづきを楽しみにしています。

真さん、はじめまして。エンポケファンと申します。今日、この真さんのブログを知りました。

今回の記事、素晴らしいですね。共感するところ大です。

ひこうき雲さんのブログでも、真理さんの歌について素晴らしい解釈が展開されており、感服したところなのですが、真さんのように緻密な解析をして聴くことは、小生にはとてもできません。しかしながら、ここでハイライトされている「響き」は、真理さんの歌の魅力を語る上で絶対に欠かせませんね。

私はアルバム単位で聴くスタイルが定着しているところ、こうやって1曲、1曲をピックして聴き込むというのも、これからやってみたいと思いました。ありがとうございます。

また、真理さんという存在自体が大好きなので、こういう切り口は適切でないのかもしれませんが、あの響きは前期のほうに、より多くあらわれているような気がします。(深く分析しておりません。)

今後も、どのような解釈が出てくるのか、楽しみです。どうか頑張ってください。

以上

<追記> ひょっとして、真さん、オーディオ好きですか? (そうでなければ、無視してください。)
クラシック音楽でさえ、結局大手はSACDを出さなくなり、CD音源には不満でした。なので、息子への仕送りもあり、出費はままならないのですが、約1年前から、PCオーディオを始めました。そこで詳細は割愛しますが、CD専用外部ドライブからWAVリッピング後、UPCONVというソフトで、ビット数とサンプリング周波数を、16bit/44.1khzから24bit/96khzに伸長させたファイルをまず作成し、USB専用電源を介して、DAコンバータに送っています。そこで192khzにさらに伸長するか、または、PCM信号をSACDのようにDSD信号に変換するか、いずれかのオプションを選択しています。playerソフトは、windows explorerをkillするCMP2です。小生の結論では、CD再生には戻れません。そして、真さんご指摘の響きの再生には、DSDに軍配があがるような気がします。

すばらしいアプローチ法ですね!
天地真理学だわ・・・。  学識者の方々にも読んでいただきたいです♪

独自性を極めた天地真理さんの歌の世界において、ポイントとなる項目について、論理的に分析する作業は大変価値のあることだと思われます。その根底には、絶対的な “ 心地よさ ” という基 (直観)があり、自然の直観に論理性をもたせることで、説得力を持つレポートとなることが解かります。真さまが何を生み出していかれるか・・本当に楽しみです。
真理さんは驚かれることでしょうね・・☆

ひこうき雲さん

ご期待に沿えるかどうか。
3曲選ぶときについつい 天地真理辞典=ひこうき雲さんのHP を参照してしまい
あまりに絶賛のものには手を出しにくいし
かといって気に入ってなさそうなのを取り上げるのも気がひけるし
てなことを考えてしまいました。
結局は自分が本当に感じたことを書くしかないんですけど。

エンポケファンさん

はじめまして。
私も「真理さんという存在自体が好き」というところから入って、
今もその気持ちは変わりません。
他での書き込み等ではそのような思いを爆発させてしまうことがありますが、
ここではそれを極力抑えることに苦労しています。

オーディオの件、本当は好きで独身時代は多少のお金をかけていましたが
結婚後はそれらも老朽化してしまって処分し、
今はラジカセレベルのものしかありません。(悲)

ご紹介のPCオーディオ、興味深く思っており
そのうちこっそり試してみるかもしれません。
これからもよろしくお願いいたします。

愛さん

「天地真理学」とは。メロンパンさんのお株を奪ってはいけません。
「天地真理讃」ぐらいにしておいてもらった方が。

こういうBlogやYouTubeチャンネルをやられている諸先輩方も
真理さんにも見てもらいたいと思っていらっしゃるのでしょうね。
でも私のなどは「頭が痛くなる」といってすぐスキップされそうです。

今日の今、初めて真さんのプロフィールを見まして、「あっ、ツイッターと同じ ピアノを弾いているアイコンがある・・・」 で、頭の中で色々な事が一致しましたぁ。(笑) ( 遅いですよね )
マイブログに、来て下さって有り難うございました♪

でもって、「時間ですよ」 などの天地真理さんの話し声そのものにも、ピンクノイズというか、、、つまり、太い地声と、高い裏声と、かすれ声が。 この3つが不規則に、それ゛ぞれ強弱つけて、自然に降り混ざって喋るモンだから、くすぐったくて、気持ちが良いんですねぇ。 もしかして、こんな気持ち、俺だけではないのでは(笑)

つまり、天地真理さんって、話の声質そのものが、【 f分の1ゆらぎのリズムをもっています。 】 と。、、、直感的ですが(笑)

だから、こんな声の持ち主が 高音、低音、強弱、全ビブラート、後半ビブラート、あえてビブラート無し、ハスキー ファルセット、波動砲のようなロングファルセット、そして 圧巻は 洞窟のような・鐘のような 頭声ファルセットが散りばめてある。
イタリアのオペラのファルセットも含めて、こんな凄い歌手が他にいるでしょうか?

私の独断と偏見では、「ここが f分の1ゆらぎ」 ではなく、一曲の全体的が f分の1ゆらぎの構成になっているように感じます。
なので、一曲を聴き終わったときには 癒しを感じ、安堵感を覚え、何回も、何回も 聴きたく成ってしまいます。
この感情は、理屈ではないので 仕方有りません。

恥ずかしながら・・・こんな状態が去年の6月から七ヶ月間 続きっぱなしですな、、、(笑)
こんな状態が ( もしかして 天地真理病 ?(笑) ) いつまでつつく事やら。。。汗、、、真理ちゃ~ん、何とかしてくれ~(笑)

イッチーさん

MAHO☆Styleでお誕生日コメントを書いたり、SonyMusicにコメントを書いた「おっさんM」と
Twitterの「masamatsumoto」と
昨年終盤から使い始めた「真」はすべて同一人物です。
いい加減に始めたことがバレますね。

YouTube、Blog、Twitterで出てくるHNを照合するってちょっと手間かかります。
イッチーさんも荼太朗さんと同一なのか初めのころはわかりませんでした。
中には最初からきちんと統一されている方もいらっしゃいますが。

「天地真理学」や「天地真理讃」でなくて、
私も「天地真理病」にすればよかった。失敗しました。

真さん、お返事を有り難うございます。
ハンドルについては、ご迷惑をお掛けしまして 申し訳御座いませんでした。 時々説明は していますが・・・

イッチー /天地真理さん関係のみ。
いっちー/音楽関係 ( 懐かしのエレキバンド/ 寺内タケシ ベンチャーズ 加山雄三 CCR 関係のみ )
荼太朗 (ちゃたろう)/お茶関係と 上記以外の全てに使用。(荼は、柔らかい新芽の事です)

理由/ネットで知り合った色々な方から、メールを頂いたり、声をかけられるため、私が判断しやすいように
     呼ばれた名前で、失礼を少なくしています。
ちなみに、「真さん」は、各グループに1人、合計3人いまして、、、この分け方が役立っております。(笑)

追伸/真さんと私は、共通点がありますね♪
知能指数は、ずっと私の方が低いのですが、、、、一つのことを深く掘り下げていく研究心です。
(お茶の 「火入れ」 に関しては自信があります。)

結果が出るかどうか? は問題ではありません。 駄目だったも、良かったも、結果が出なかったも、全て 結果です。
私の若いときと違って、今の、若の者は 直ぐにあきらめてしまいますね。

長文を、スンマソン(笑) では。


イッチーさん

イッチーさんに長文を書かせただけでも、
このBlogを立ち上げた甲斐があるというものです。
ここは長文歓迎です。短文でもいいですけど。

祖母がお茶の先生をやっていたもので
お茶と聞くと懐かしい感じがします。
「トイレの神様」じゃないですが。

どこかに ”最終工程の「火入れ」が肝心です。...最も難しい工程です。”
とありました。そこに自信がおありとは、
おそらく一級の職人気質もお持ちではと思います。

私は工学関係の研究・開発に携わってきましたが、
職人気質の先輩研究者とお近づきになるのが楽しみでした。
そこら辺が私も、先輩であるイッチーさんに
親近感を感じてしまう所なのかもしれません。

ちなみに私も The Ventures 大好きです。

こんばんは春の風です。
近頃噂の真様のブログへ寄ってみました。
なんと素晴らしい音楽理論なのでしょうか!
しかし無学な私には難解すぎてよくわかりません(苦笑)

アイドル歌手にこれほどの理論武装するなんて今迄いたでしょうか。
これからは天地真理教を布教するには理論武装は必要です。

私もこの論文を読んでから改めて真理ちゃんのCDを聴きました。
真理ちゃんの高域が659Hzまで出るとお聞きして、なるほどよく解りませんが
なんと素晴らしい歌声だと妙に感心してしまいました。
これからも真様の素晴らしい音楽理論を楽しみにしております。


イッチーです。 マイブログの真さんのコメントを見落としていました。
いま、お返事( 新理論 ? 真理ちゃんに怒られそうです (笑) ) を書きました。
http://blogs.yahoo.co.jp/sumikirigakunodakimyouga/62410718.html
有り難うございました。

春の風さん

はじめまして。
この分野の重鎮のような方から声をかけていただけるとは光栄です。
私が書いていることは理論などと言えるものではありませんが
数字を交えないとはっきりものが言えないと思っている節があって
まあ病気のようなものと、大目に見てください。

春の風さんのブログにある対話とかはノンフィクションですよね。
そういうつもりでいつも楽しく読ませてもらっています。

私は春の風さんのような素材は全く持ち合わせておりませんが
皆さんに続いて少しでも盛り上げられたらと思っています。
これからもよろしくお願いいたします。

はじめまして
真理ちゃんファンがそれぞれの感性でブログを立ち上げられ、又、ひとつ賑やかになり本当に心強い限りです。
真さんのアプローチ、驚きと尊敬の念を禁じえません。実は私もこのところ、客観的に評価するには、敢えて視覚を排除し、聴覚だけでどのように感じるかがとても有効な評価法になるのではと考えていたところです。ですから真さんのアプローチ法は我が意を得たりという想いです。しかも感性の分野に数値を取り入れることで客観的な説得性を持たせる・・・。彼女の楽曲を正当に評価する為に有効な方法だと思います。大変な作業だと思いますが根気強く頑張ってください。

まっちゃんさん

はじめまして。
激励ありがとうございます。
ネタはいくつか固まっているのですが、
皆さんにお見せできるようにきちんと整えようとすると
結構大変ですね。
諸先輩方はよく続けておられると今更ながら敬服します。
もうしばらくお待ちください。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/569269/50326307

この記事へのトラックバック一覧です: 天地真理5 証①音色美 「好きだから」-1:

« 天地真理4 不世出の証 | トップページ | 天地真理6 証①音色美 「好きだから」-2(音圧) »

2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

最近のトラックバック

ウェブページ

無料ブログはココログ